プロ1年目の開花 甲田良美ツアー初優勝の軌跡

2010年プロゴルフ国内女子ツアーの第13戦「リゾートトラストレディス」で、プロ1年目の甲田良美がツアー初優勝に輝いた。今シーズンの目標は「まず1勝すること」だったが、「まさかこんなに早く」と甲田自身が驚いた、シーズン半ばでの勝利だった。
天性のゴルフセンスに加え、ソフトボールで培った体力や、華やかな容姿が注目を集めながらも、ツアーでは予選敗退が続いた厳しい前半戦だった。何とか結果を出したいと、人より多く練習することを心に決めて励んだ。初優勝したことで、その努力の方向が間違っていなかったことがわかった。
「リゾートトラストレディス」では、今まで取り組んできたことすべてがうまく噛み合ってくれたのだと甲田は言う。「調子は悪くなかったので、あとはコースが合ってくれればいいスコアが出るかもしれないと思っていた」が、蓋を開けてみれば、3日間ともスコアは60台。初日から2位タイにつけ、最後は2位に3打差をつけての逆転優勝で、ゴルフファンにルーキー甲田の存在を印象付けた。
1日目:5アンダー2位T(7バーディー、2ボギー)
2日目:通算8アンダー2位T(4バーディー、1ボギー)
最終日:通算14アンダー優勝(8バーディー、2ボギー)
最終日に2位タイでスタートしたときも、優勝は全く意識していなかった上に、緊張もしていなかったそうだ。しかし、レギュラーツアーで優勝争いに加わった経験のない甲田がプレッシャーを感じないようにと、今大会でキャディーを務めてくれた石井忍プロが「スコアボードを見るな」という指示を出していた。甲田が笑いながら振り返る。「バイザーと傘でスコアボードを隠しながら、ラウンドしました」。スタート以降、自分が何位にいるのか最終ホールまで知らずにプレーを続けた。
途中、8番あたりから緊張して、12・13番はボギー。しかし14番でバーディーを取ったところから「吹っ切れた」。リラックスして目の前の1打に集中することができた。15・17・18番でもバーディーを取り、最終日だけで8バーディー。こんなにたくさんのバーディーを取ったことに、トーナメント会場を後にして人に指摘されるまで、甲田本人が気付いていなかった。いかにボールを打つことだけに集中していたかということがわかる。
最終18番、バーディーパットは約6m。「自分とカップの延長線上にスコアボードがあったんですが、それでもボードは見ずに、必死でラインだけを読みました」。2パットで沈めれば優勝だとわかっている石井プロは、甲田に「タッチ(※)で行け」と繰り返した。(※カップインを狙うのではなく、距離をあわせて、次のパットで確実に入る位置に寄せること。)「15回くらい、『タッチで、頼むからタッチで』と繰り返していましたね(笑)」。
甲田には「これは入りそうだ」という予感があったという。石井プロにもそれを伝えて、狙ったところ、見事にカップイン。鮮やかなバーディーフィニッシュ、そして甲田の初優勝に、ギャラリーが沸いた。
カップの中のボールを取る前に、真っ先にスコアボードを見ると、優勝が確定していた。「『勝ったのかな?』と、他人事のような感覚でした」。感動が沸き上がってきたのは、沸いていたギャラリーが静まって、最終組のホールアウトを待っている間。「両親のことや、応援してくださる方のこと、今までやってきたことが、走馬灯のように…というのはおかしいですが(笑)、一気に押し寄せてきました」。涙がポロッとこぼれた。しかしそれも一瞬。プレー終了後は「バタバタでした」と本人が言うように、関係者や取材陣に囲まれ大騒ぎに。初優勝を祝うメールは500通を超えた。
甲田の持ち味である「攻めのゴルフ」。それを充分に発揮できたことが、この優勝の一因だと言える。最終日18番ホールの最終パットに代表されるように、思い切り攻めていくゴルフがやはり自分には合っているのだと再確認できた試合だった、と甲田は語る。「ミスをしてもまた練習をすればいいと思うようにしています。乗りそうなロングホールは、2オンを狙っていきます」。
ツアートーナメントでは、練習でも試合でも、他のプロの上手いプレーに圧倒され、誰と比べても自分が優れている部分が一つも見えなかったこともあったという。果たして自分はここまで上手くなれるのか―――。結果が出せず弱気になっていた甲田を、初優勝の自信が本来の前向きな彼女に戻してくれたようだ。
優勝した翌週のトーナメントでは、福島晃子プロ、アン・ソンジュプロと、同じ組でラウンドした。過去に賞金王を2度獲得している福島プロに、躍進中の若手で賞金ランキングでも高位につけているアン・ソンジュプロ。甲田にとって学ぶことの多い、貴重な経験だったことだろう。「お二人ともすごく飛ぶのに、小技もうまいんです。2日目は私が一番フェアウェイをキープできていたのですが、スコアは私が一番悪かった。つまり、グリーンを外したときに拾えていなかったんです。福島プロやアン・ソンジュプロは、外しても拾えていました。飛ぶのに小技がうまかったら、敵うわけがないですよね。もっと技術を磨かなければ、と意欲を新たにした週でした」。
技術的にも精神的にも人間的にも、もっともっと強い選手になりたいと言う甲田。次に優勝争いに加わったときは、「スコアボードを見ても思い切り攻めていけるくらいの、強い精神力を持っていたい」と、甲田は力強く言った。プロ1年目の甲田良美が、今、その花を開かせようとしている。
(文:岡田佳奈子)
















