第30回 ショートトラックのエース桜井美馬
約30年に及ぶ僕のトレーナー人生の中で、これまで色々な種目のアスリートを見てトレーニング指導をしてきた。前回はプロ野球の中田翔選手と大相撲の把瑠都(バルト)関について書いたけど、今回はアマチュアスポーツの一流アスリートについて書こうと思う。実は、飛び抜けて優れた感覚を持つ選手に最近も出会ったんだ。そのアスリートは先のバンクーバー冬季オリンピックにスピードスケート・ショートトラックの日本代表選手として出場した桜井美馬選手だ。彼女が初めてトータル・ワークアウトに来たときには、久しぶりにゾクゾクする感覚を味わったよ。
美馬選手の能力はお世辞抜きでAクラス。しかも、単純に運動神経が優れているとかそういう次元の話ではなく、彼女にはトレーニングの意味をすぐさま感じ取る感覚が備わっている。しかも頭も良くて、物事の理解能力に長けている。褒め過ぎのように聞こえるかもしれないけど、本当の話。僕は無駄に人を褒めるタイプの人間じゃないのはみんなわかっているでしょ?美馬選手は、スケートをしている感覚でトレーニングをするんだ。頭と身体の両方で意識してやっているから吸収が早く、競技にもすぐに活かせる。
具体的な話をすると、彼女には傾斜を利用したスピードトレーニングを施した。普通だとアスリートでも感覚を掴むのに時間を必要とするんだけれど、美馬選手は練習を始めるや否や、X軸とY軸のベクトル方向を理解した。そしてトレーニングの成果を得た時の、将来の自分のイメージまで作っているように思えた。そんな選手はなかなかお目に掛かれない。
ただ、トレーニングとなると選手とのやりとり以外にも、他にも気を使わないといけないことがある。例えば、美馬選手には監督がいて、その監督の方針もある訳だから、僕がしゃしゃり出ることはしてはいけない。また、初めて監督に会った時、やはりショートトラックの監督は僕ではないから、もちろん謙虚にしなければならないのは僕の方。今後もトレーナーとしてそうであるべきだと思うし、僕らパーソナル・トレーナーは決して全ての事に関与してはならない。いつも自分から前へ前へと突き進むだけではなくて、今ある関係を大切にすることも大事にして信頼関係を築いていかないとね。
今年のバンクーバーオリンピックには、美馬選手の他にも何人か僕がトレーニング指導をしている選手達が出場した。残念ながらメダルには手が届かなかったけれど楽しませてもらったよ。そしてきっと彼らとの信頼関係は、オリンピック後にさらに濃くなるはずだ。だって彼らはトータル・ワークアウトでのトレーニング成果を自身の身体を持って感じたはずだからね。
















