第29回 トレーナー冥利―才能との出会い
トレーナーを生業としている人間にとって、一流の才能との出会いというのは、やはり格別だ。特に若い才能との出会いには、無限の可能性を感じるだけに、僕の中にも自然とアドレナリンが湧き上がってくる。2010年には、早くも僕をエキサイトさせてくれる素晴らしい出会いがあったんだ。それは日本ハムファイターズの中田翔選手だ。1月、彼が初めてトータルワークアウトに来てくれてトレーニングを見たんだけど、彼の動きはシンプルに素晴らしいの一言だった。その日は主に斜面(上り坂)を使ったランニングを行ったんだけど、下半身の粘りが抜群なんだ。そんな彼の下半身の粘り強さ、下半身のパワーを上半身に伝える動きの質は中田翔独特と言える。
例えば中田選手を含む10人の似たような体型の人が集団でランニングをしているとするよね。僕は中田選手の顔を見なくても、下半身の動きを見ただけで中田選手を識別する自信がある。それぐらい独特、特別なものなんだ。それともう一つ、彼の動きには何ともいえない色気、今風な言葉を使うならオーラのようなものを感じたんだ。あの種の色気を感じたのは清原さん以来初めてかな。一軍での結果を残せないままプロ3年目のシーズンを迎えてしまった中田選手だけど、トータルワークアウトに来たのも危機意識の表れだろうし、今年はブレークするんじゃないかな。
もう一人、プロのアスリートで僕をワクワクさせてくれるのが大相撲の把瑠都(バルト)関だ。彼との出会いは2007年だから、2年以上の付き合いになる。ちょうど彼が左膝の怪我に悩まされていた頃、トータルワークアウトでトレーニングを積むようになった。最初は体の使い方を一から見直そうということで、歩き方と走り方の修正をするために1年間ぐらいかかった。デビューしてからしばらく、彼は2メートル近い体格と圧倒的なパワーがあったがゆえに、専門的なフィジカルトレーニングなどしなくても、勝つことができた。でも幕内上位になれば相手も上手いし、スピードに翻弄されてしまうことが多くなって壁に当たってしまったんだ。この壁をぶち破るために現在、彼は100キロくらいのラグビー選手が取り組むようなメニューをこなしている。基本的には俊敏性を向上させるようなメニューをね。彼の体重が185キロくらいだから、これは相当ハードだ。何といっても自分自身の体重が負荷となるからね。でも120キロの力士にも負けないだけのスピードを身につけようとしているんだから辛いのは当然だ。僕は、把瑠都関が今のトレーニングを積み重ねて、もちろん相撲の稽古も精進すれば、近い将来大関になれると思う。なにしろ朝青龍が引退した相撲界で、横綱・白鵬に真正面から挑んで勝負になるのは彼と琴欧州だけだからね。
















